ライ麦畑でつかまえないで


サリンジャーのライ麦畑でつかまえて、という本がよく分からない、という話を前に書いた。


で、仕事中手が空いて暇を持て余し、大将に聞いてみた。
「ライ麦畑でつかまえて、って読んだことあります?」
「ああ、俺サリンジャー好きで全部読んでるよ。」
「マジっすか!?キャッチャー イン ザ ライの良さがさっぱり分からないんですよ。何度も読もうと思って読みかけるんすけど、途中で挫折しちゃうんですよね。あれってどこが面白いところですか?」
「あー、もう今更読めないかもね。思春期のよく分からない葛藤とか、青さとかそういうものを表現してるんだけど。」
そこで紫電改さんが、
「あれあれ。汚い大人になりたくない! 的な。」
「あー。中二的なもの?」
ECHOESとか好きだったけどなぁ
ライ麦畑駄目なんだよなぁ。
「いい子ちゃんだったわっしゅには分からなかったんじゃないの?」
「まあ、歳取ってからはもう理解出来ないかも。」
そうか?そうなのか?
俺だって、エア盗んだバイクで走りだし、昼の学校でプレパラートを砕いて回ったりしたものだが。
しないけど。
「サリンジャーって、新しい作品を発表するたびに、何か新しい要素を入れてくるっていうか。自分の中から出して来るっていうか。逆にそういうものがないと、出来てても発表しなかったりするんだけど。他のも面白いよ。」
「他に何かあります?」
「ナインストーリーズいいよ。」
「ああ!そうだ!読もうと思って忘れてた。よし、読んでみます。」
「あれの中の、バナナフィッシュにうってつけの日、って言うやつが、BANANA FISHの元になってるんだけどね。」
「ああ、吉田秋生さんの。読みました読みました。」
「サンショウウオって読んだ?」
「??聞いたことあるような・・・。」
「菊池寛だったかな・・・。ナインストーリーズの話を下敷にしたような話があって、それがまたいいんだ。小っ恥ずかしいだけど。」
「中二病全開?」
「全開全開。本人読み返したら恥ずかしくなったらしくて、3回ぐらい書き直してるんだよ。」
「へー。」
「書き直したやつは、小っ恥ずかしいとこが薄くなっちゃてるんだよね。逃げやがった。」
「ほほぉ、なんか凄そうですな。」
「そうそう。俺も昔は、あれを朗読とかしてテープに吹き込んだりしてたよ。」
「はぁ!?? 大将も全開じゃないですか!??」
そこに紫電改さん。
「俺も電車の中で宮沢賢治とか読んで電車の中で人目もはばからず泣いたりしたよ。中也とか。」
「はぁ、まあ紫電改さんは驚かないです。というか、今でもやってそう。」
「おい、大将!持って来いよ!テープ!」
「は?やだよ。どこにあるかわかんねーし。」
「あるよ!探せよ!聞きながら仕事しよーぜ!」
「しねーよ!そんな事になったら聴き終わったあと全員殺す。多分実家だし。」
「捨ててはないのか・・・。じゃあ、いいよ!新しく録音しようぜ!」
「・・・・、嫌だ。」
「おいおい!自分の可能性に蓋をしてんじゃねーよ!ジャンプアップ!まずは朗読だよ!」
「いや、人に聞かせたくない。」
「だれだって最初は怖いさ!勇気を出して!はじめの一歩!」
「やんね。」
「じゃあ、いいよ・・・。持ってくる持ってこないは別にして、まず朗読して録音してみよう。いいよ、家で一人で。まずやってみよう!」
「なんだ・・・?素人を脱がせるカメラマン・・・?」
「まず!そういう事をやってみることで殻を破れるんだよ!聞かせろよ!お前の魂の叫び!!」
「・・・・、ああ、でも・・・。なんか、世に出る人ってそんなだよな・・・。」
「え?」
「何も言ってないのに自分からバンバンテープ持ってきて聞かせようとする感じ。」
「・・・ああ。」
「もうなんなら、十七の頃のテープと二十歳の頃のテープと現在のテープを並べて聞き比べさせる感じ。」
「ああ・・・、はいはい。三代目魚武濱田成夫とかそんな感じっぽいですよね。で、いかにも中二的っていうか。」
「いや、あれなんてド中二病でしょ?」
「ですよね。でも、あそこまでやれば飯食えるわけですよね。」
「〇〇さんがね。ちょっと鼻の描き方を変えたとか、ここちょっと変えたとか色々見せてくれるわけよ。でも、正直他人から見たらわかんねーじゃん?しらねーよ、って。」
「まあ、そうですよね。」
「で、ちょっと分からないですねー。って感じで誤魔化しにかかると、『えー、こんなのも分からないんですかぁ?マジっすか?はぁ?』って感じで・・・。」
「あー。」
そこで紫電改さん。
「それ、俺じゃん。」
ああ、分かる分かる。っぽい。
「そうか・・・、俺に足りないのはそれか・・・。」
「だから!溢れ出るリビドーを!衝動を!呼び覚ますために!朗読して録音を!」
「いや、枯れちゃったんだよ。出来ねーよ。」
「だから俺がレッスンを!」
「やらねーよ!」
「やれよ!聞かせろよ!ゲラゲラ笑いてーんだよ!」
「本音が溢れてんじゃねーか。」
まあ、見回せば分かるけど、漫画なんていい歳して中二病こじらせた人の集まりだから。
恥ずかしい部分の切り売り切り売り。
「・・・・。」
「・・・・。」
「大将?」
「ん?」
「サリンジャーって読んだことあります?」
「強ぇな!諦めねぇな!」
「僕、ライ麦畑でつかまえてを何度か読もうと思っては面白さが分からなくて、諦めちゃうんですけど。」
「ああ、サリンジャーね。爆裂戦隊サリンジャーね。」
「ネットでレビューとか検索すると、滅茶苦茶評価高いんですよ。」
「赤サリンジャー!青サリンジャー!」
「ナインストーリーズとか読みたいんですけど。」
「石ノ森章太郎がノの字を入れることになったきっかけの作品ね。爆裂戦隊サリンジャー。」
「え!?石森章太郎だったんですか?元々?」
「そうそう。」
「・・・・。」
「・・・・。」
「大将朗読とか好きですか?」
「頑張るな・・・」
夜は更けていく。

わっしゅばーん

わっしゅばーん について

ヘヴィとの腐れ縁。 元漫画家さんのアシスタント。 売れっ子さんばかりについてましたけど、僕は売れませんでした。 ストレス解消にとりあえずゲームを買う。積みゲーだらけ。 漢直使い。TUT-code。 モンハン引退。

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