絵を描く人間の自意識

バクマンの、第90話。
ページ90 「芸術と商品」、を読んで思ったこと。
単行本派の人には伝わらない話だけど。


絵を描いてご飯を食べる人々には、当然の事ながら、自分の絵に対するある程度のプライドみたいなものがある。
僕は絵が下手なことがずっとコンプレックスだし、上手くない事を自覚している。
それでも、絵に駄目出しが出るとキツい。
何と言うか、性格とか習慣とか、そういう事を注意されるのとは何か違う。
自分の中身というか、内包するものを否定されたような気分になるのだ。
表現って大なり小なり、自分の中のもモノを切り売りするというか、滲み出てしまうというか。
だから自分が描いた絵を否定されると、自分自身を否定されたような感覚に陥る。
勿論、そこまでみんな考えてるとは思わないけど、リテイクというのは結構しんどい。
漫画は中心が漫画家本人で、周りはその絵に寄せていく必要がある。
処理や特徴やこだわるポイントがそれぞれ違って、極端な話になってくると、話を聞いただけではニュアンスを掴みようがないシーンも出てくる。
今のバクマンだと、デスノートの時より背景含めてデフォルメが利いているし、線はどちらかというと細くて繊細。
でも、パースは割ときっちり。
藤田和日郎さんや、雷句誠さん、曽田正人さんの仕事場などは勢いやスピードを重視してそうだし、初恋限定。の時の河下水希さんの仕事場は、物凄く繊細な線を要求される。
埋めればいい、とにかくスピード、と言う仕事場もあるし、平野耕太さんのところは黒く、太く、大暮維人さんのところは、独特のパース感や多少のデフォルメ力が必要そう。あと、まあ、上手いこと(笑
荒木飛呂彦さんのところは、全体的に相当特殊な技術を身につけることになる。
ジョジョの元アシの人が漫画を描くと、どんなに匂いを消しても、編集さんにはすぐ分かるらしい。(多分俺でも分かる)
拘るポイントも人によって違って、変形パースを多用する人、キャラをとにかく目立たせたい人、正確なパースを必要とする人、奥行き感に拘る人、縦パースに拘る人、画面配置に拘る人、アングルに拘る人、特に拘らない人、色々。
集中線、スピード線でさえ、仕事場によって傾向がある。
コマによっても話の進め方で見せるポイントが変わるので、コマ毎で描き方が変わったり。
特殊な仕事場の経験があるほど、よそに行った時に対応しにくい。(引き出しが増えるのはいいけど、染まってると大変)
自分自身が向いている絵の方向、というものもあって、それが仕事場と合わないとかなり混乱する。
感覚的な部分で掴めない事が多々ある。(まあ、僕が絵が苦手なせいだけど)
絵が感覚的なんだけど拘りのある作家さんと、上手いけど仕事場と合わないアシさんとかの組み合わせになるとかなりカオス化する。
なまじ上手いと、感覚的な作家さんの指示を受け入れることが出来ないのだ。
「ここは絶対にこう見えない。」
例えば漫画で僕がよく気になるのは、地面にめり込んでる人。
下の画像は、僕が前に好きだと書いた「シガテラ」。

僕には人物の脚が地面にめり込んでいるように見えるんだけど、伝わるかな・・・?
カメラの高さを考えると、多分背景のパースからこの辺の高さ。

人物が遠ざかっても、カメラの高さ(アイレベル)上のパーツは同じ高さなので、

キャラをコピペして遠ざけるとこんな。
分かるかなぁ・・・、門柱との位置関係。
下半身を描き足すと多分脚が地面に潜ってしまう。
多少違和感がない感じにするなら、

このぐらいかな? と思うけど。もう少し上かな???
まあ、この絵は結構アリなぐらいなバランスで、重箱の隅をつつくような話なんだけど。
次の絵はもっと気になった。

キャラの頭の位置が低すぎる。
アイレベルが、

で、家の門の辺りまでキャラを移動させると、

こんな。頭が増えてるのわかりにくいけど。
これは完全に地面に埋まる。
ん?あれ?
最初書きたかった話しと全然変わってきた・・・。
えーと、一つ勘違いしてほしくないのは、シガテラをディスってるわけではなく、こういう背景をどうのこうの言ってるわけではなく。
僕はこういう指示が来たら言われたとおりに描くし(敢えて狙っている効果があるのかもしれない)、どうしても気になるなら自然に見えるようにするか相談する。
僕が前に、「アバターの3Dが逆パースに見える」と言う話をしたけど、まあ、あのぐらいなどうでもいい話なのだ。
漫画の面白さには関係ない。
もちろん、こういう背景になることを嫌う作家さんもいるので、そういう時は気を付ける。
けど、上手い人の中に、上手いが故にこういう絵を描く事を受け付けない人だってやっぱりいるわけで。
絵というものは人間の脳を一回通過してからアウトプットされるものなので、手癖や理想や理論がゴチャ混ぜになって、個人によって違うものが出来上がる。
自分の絵に対するプライドが高い人程、妥協しにくくなる。
これはストーリーに対しても勿論そうで、折れない人は衝突しやすい。
やっぱり仕事柄、ストーリーに関してもみんなで色々話すことがよくあるので、好み、傾向って見えてくる。
と、いうことを、バクマン90話を読んで思った。
ただ、バクマンのようにチーフが全下描き、みんなでペン入れ、というのは相当珍しいと思う。(今まで一度だけ聞いたことがある)
下描きも個人で癖があって、僕は他人の下描きにペンを入れる事は出来ない。
僕は完全完成状態の絵をシャープペンで描いて、なぞるようにペンを入れる。
ラフなアタリでペンを入れながら作っていくような人だと、もう全然無理(笑
漫画の現場の悩みは、かなりの部分を”アシスタント”が占めている。
上手くて速くて人柄がいい人なんてそうそういないのだ。
一番大事なのは人間性。
バクマンには厄介なアシが出てこないけど、”見せたいポイント”がそこではないということなんだろう。
一回だけ年下の作家さんとこ行ったけど、連載初めての人だったし、それは違うとか色々言ってしまった。
あの時は本当に申し訳なかったです・・・。
書いてみたら何か違う話になった。
画像弄ってたらそっちに一生懸命になってしまった。
未だにレイヤー分からん。
SAIで直線どうやって引くのかわからずに、タブレットの上で雑誌を定規にして線引いたよ・・・
シガテラを引用させてもらったのは、最近毎日寝る前に読んでるから近くに転がってたんです。
好きなんです。
悪意はないです。
ねずっちじゃないです。
ちなみにこの、キャラが地面に潜ってる、宙に浮いてる、現象は、結構ビジュアルを全面に押し出した漫画でも割とよくあります。
だから、そんな大した問題じゃないのね。
と、僕は思います。

わっしゅばーん

わっしゅばーん について

ヘヴィとの腐れ縁。 元漫画家さんのアシスタント。 売れっ子さんばかりについてましたけど、僕は売れませんでした。 ストレス解消にとりあえずゲームを買う。積みゲーだらけ。 漢直使い。TUT-code。 モンハン引退。

絵を描く人間の自意識」への2件のフィードバック

  1. SAIのことは知らないが、直線ひくのも分かりにくいソフトなのかい?
    それにしても、タブレットに定規とか・・・キミは天才か。

  2. やってみれば分かるけど、別にどうということはない。
    厚めの雑誌を使えば簡単。
    逆に定規だと難しい。
    SAIは簡単でいいソフト。
    安いし。

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